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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)9576号 判決 1969年2月28日

原告 東京インキ株式会社

原告 中庄株式会社

原告 第一紙業株式会社

原告 三広産業株式会社

右四名訴訟代理人弁護士 小野正広

被告 金谷不動産株式会社

右訴訟代理人弁護士 橋本三郎

主文

被告は、原告東京インキ株式会社に対し、金二〇〇万円およびこれに対する昭和四二年九月一七日から支払ずみに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

原告東京インキ株式会社のその余の請求、および原告中庄株式会社、同第一紙業株式会社、同三広産業株式会社の請求はいずれも棄却する。

訴訟費用はこれを六分し、その一を原告東京インキ株式会社の、その一を被告の、その四を原告中庄株式会社、同第一紙業株式会社、同三広産業株式会社の負担とする。

この判決第一項は原告東京インキ株式会社が金六〇万円の担保をたてたときには仮に執行することが、できる。

事実

<全部省略>

理由

一、原告らの請求の当否はさておき、まず請求原因第一記載事実のうち売買代金についての被告の時効の抗弁について判断する。

右売買代金債権の消滅時効は商法五二二条民法一七三条一号により二年と解されるところ、原告らの主張自体から昭和三八年六月頃にはいずれの債権も行使しえたことが認められ、原告らが本訴を提起した昭和二九年九月七日(本件記録から明らかである)までの間に二年以上の日時が経過していることが明らかであるから右抗弁は理由があり、原告らの売買代金債権請求は失当である。

二、請求原因第一、二、(二)の原告東京インキ株式会社の新会社に対する貸金および第二の原告ら四名の利得償還請求権の主張については、被告と新会社が人格的に同一であるというのであれば格別、現実に取引し手形を振出していたのが新会社である以上、単に原告らが相手を被告と誤信しており、その原因を被告が作ったというだけで取引の相手ないし手形の振出人を被告と同視すべきであるというのは論理に飛躍があり採用するに足らない。

三、つぎに名板貸の主張であるが、被告が名板貸の責任を免れないとしても、売買代金債権については前認定のように時効消滅しているし、原因関係上の売買代金債権が時効消滅している以上、その支払のために振出された手形債権が時効により消滅しても、振出人に利得があるとはいえないから、利得償還請求権の点も理由がなく、従って東京インキ株式会社の貸金債権についてのみ判断する。<証拠>を総合すると、

被告は、大正一五年七月二五日、株式会社金谷印刷所の商号で各種印刷、紙器加工品製造とこれらに付帯する一切の業務を事業目的として設立され、昭和五年六月一日からは肩書住居地に本店をおいて営業を続けてきたものであり、原告東京インキ株式会社は昭和二三年頃から被告と取引を継続してきた。

被告の昭和三六年頃の取締役は金谷照太郎、福田一、田永契矩、金谷昭一の四名であり、金谷照太郎が代表取締役をしていたところ、同人らは昭和三六年一一月二四日被告の本店を文京区水道町三八番地に移し、即日従来の本店所在地である肩書住所地に商号、目的、役員構成を全く同じくする株式会社金谷印刷所を作り営業用建物、印刷機械は被告がそれまで使用していたものを被告から賃借した形をとり、銀行預金、売掛金、受取手形、製品等流動資産負債と従業員は被告からそのまま引きつぎ、従来の建物で従来の看板をかけたまま、結局外観上は被告がそのまま営業を継続していることを疑う余地のない状態で、営業を継続し、取引先には(銀行を除き)新会社設立の事実を通知せず、昭和三七年一月一五日被告の商号を現在の金谷不動産株式会社に改め、その目的を動産不動産の管理売買ならびに賃貸とこれに付帯する事業に変更し、同年一月三一日本店を肩書住居地に戻した。

そして原告東京インキ株式会社は新会社設立の事実を知らず、被告と信じて新会社と取引を継続し、昭和三八年二月二八日頃金二〇〇万円を同年五月から八月まで毎月二五日限り五〇万円ずつ返済する約束で貸渡したところ、同年五月二五日新会社は不渡手形を出し、同月二七日解散するに至ったので、調査したところ、自分が被告と信じて取引していたのが新会社であったことが判明した。

以上の事実が認められる。

<証拠>の記載上金谷昭一が取引先に新会社設立後その事実を告げたとの点は措信しないし、他に右認定に反する証拠はない。右のような事実関係のもとでは被告は新会社に対し、自己の商号を使用して営業をなすことを許諾したものというべきであるから、新会社が原告東京インキ株式会社から借受けた金二〇〇万円およびこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和四二年九月一七日から支払ずみに至るまで商法所定年六分の割合による遅延損害金を新会社と連帯して支払う義務がある。

よって原告東京インキ株式会社の請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余を棄却し、また同社以外の原告らの請求はすべて棄却する。<以下省略>。

(裁判官 北澤和範)

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